特定非営利活動法人 NPO法人 SIDS家族の会

SIDS家族の会は、SIDSやその他の病気、または死産や流産で赤ちゃんを亡くした両親を精神的な面から援助するためのボランティアグループです。
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SIDSとは

SIDS(乳幼児突然死症候群)とは?

それまで元気で、ミルクの飲みもよく、すくすく育っていた赤ちゃんが、ある日突然死亡する。これが乳幼児突然死症候群(Sudden Infant Death Syndrome-SIDS)という病気です。

かつて多くの赤ちゃんの命を奪った疾病(感染、脱水など)は医学の進歩や社会環境の改善によって大幅に減少しています。それに代わり、以前は関心を持たれなかったSIDSが死亡原因の上位を占めるようになり、重要性がクローズアップされてきました。

日本では、年間150人くらいの赤ちゃんがSIDSで亡くなっており、乳児の死亡原因の第2位となっています。欧米では死亡原因の第1位です。

1歳未満の、特にかわいい盛りの4~6ケ月の赤ちゃんが、この病気の最大の犠牲者です(1歳を越えた子には稀です)。男女や、家庭の社会的・経済的水準などの違いには関係ありません。伝染する病気ではありません。近年特に注目されるようになりましたが、現代病というわけではなく、旧約聖書に記述されるほど古くから知られている病気です。

SIDSの原因をつきとめ、予防方法を確立するために、多くの研究者が努力していますが、はっきりした原因はまだつかめていません。今のところ、防御反射の異常がその原因と考えられています。乳幼児は通常睡眠時に極短時間の無呼吸や呼吸リズムの不整があります。しかし、通常なら容易にこの状態から抜け出せますが、中枢性防御反射の未成熟などにより、この状態から抜け出せないことが突然死に至らしめるという説です。

厚労省では、それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず、しかも死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が同定されない、原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群。と定めています。日本では解剖を行うことが少ないため、本当は原因がわからずSIDSだったケースが、窒息や急性心不全などの診断を下される場合もあります。

明確に言えることは、SIDSは事故ではなく、病気である、ということです。虐待や育児上の不手際とは、はっきり区別しなければなりません。

SIDSはほとんどの場合睡眠中に起こります。特に、うつ伏せで寝かされていた赤ちゃんにSIDSの発症頻度が高いことが疫学調査で明らかにされました。うつぶせ寝と突然死発症のメカニズムの関係は明らかではありませんが、欧米では仰向け寝を推奨するキャンペーンによってSIDSの発生率が減ったという報告もあり、何らかの関連はあることは疑う余地はありません。

最近のSIDSに関する研究

2008年にイギリスのポーツマスで開催されたSIDS国際会議での議論は、現在のSIDS研究の動向を反映しています。最近では分子生物学的分野の研究が著しく進歩し、21もの遺伝子に遺伝的多型が見出されるに至っています。心筋細胞に発現する蛋白をコードする遺伝子の6個に遺伝的多型が認められています。これら遺伝子の機能的異常は突然死をきたす不整脈の原因となりえます。神経系ではセロトニン関連遺伝子に3つの遺伝的多型が見られています。セロトニンは神経伝達物質で大脳から脳幹に広く分布し、循環呼吸調節、防御反射さらには睡眠調節にも関与していることが知られています。

遺伝的多型は遺伝子変異とは異なり、それ自体が致死的であったり、発病因子とはなりませんが、最近の動物実験の知見では、遺伝的多型を持つ動物はストレス負荷に脆弱であるとの報告があります。このことは、遺伝的多型を持つ児に環境要因が作用することが、SIDS発症に関係しているのではないかと推論する根拠となりえます。

また近年ヨーロッパでは遺伝子検索を国際共同で進めています。これは、生体由来試料の取り扱いに関して厳密に法制化し、研究に対する厳しい規制と保護が整備されているからこそなしえたことです。現在の日本では未だに研究環境は整備されていません。我が国の研究を促進するためにも、研究環境の規制と保護は早急に整えなければならない事項です。

参考)
多摩北部医療センター小児科小保内 俊雅
10th International SIDS Conference 2008 in Portsmouth
SIDS家族の会 会報 No57 2008年10月号掲載